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もう一人の自分

一人暮らしを始めたのは、地下鉄東西線が通る行徳という所だった。
東京からだと、ディズニーランド行きのバスが出る浦安駅より二つ先。千葉県は市川市に入る。
会社があったのは三越前。東西線で日本橋に出て、銀座線に乗り換えるのが通勤経路だった。

ある日の夜、日本橋から帰りの東西線に乗り、吊り革に掴まる乗客の背中と背中の通路に立ってぼーっとしていると、妙な視線を感じた。ふと横を見ると、同じく通路にいた50代と思しきおじさんが、目をカッと見開いてこちらを凝視しているではないか。
カッとされてギョッ!
思いもよらぬものを見ているような眼差しと目が合って、こちらはギョッとしたが、ひょっとしたら自分越しに何かを見ているのかと、おじさんの視線の方向を見る。と、
「あなた、○○さんのお嬢さんでしょ?」
おじさんが声をかけてきた。
“何さん”と言われたかはよく聞き取れなかったが、自分の苗字でないことだけは分かった。
「いえ、違います」
「○○さんですよね?」
「違います」

「はい、そうです」とでも言おうものなら手を握ってきそうな様相で、見知らぬおじさんの両手は中途半端に差し出されたまま、行き場を失っていた。
「ホントに違うんですか?」
「違います」
視線を逸らさず、首を捻るおじさん。
「おっかしいなあ、○○さんのお嬢さん……(ぶつぶつぶつ)」
目を見開いたまま、おじさんは納得がいかない様子で電車を降りていった。

それからしばらく経ったある日の夜。やはり帰りの東西線で、吊り革に掴まる人の背中と背中の通路でぼーっとしていると、またもや妙な視線を浴びていた。今度は二十代の女性二人組みだ。目をまん丸にして、こちらを凝視しているではないか。
まん丸目にパチクリ!
思いもよらぬものを見たようなまん丸な眼差しを受けて、こちらは目をパチクリしてみたが、ひょっとすると自分越しに何かを見ているのかと、彼女らの視線の方向を見てみる。と、
「○○さん?」
二人組みの一人が声をかけてきた。
「え、違います」
「エーーーっ」
二人して息を吸いながらの「エーーーっ」に、こちらは心中無言の「エーーーっ」である。
前回のおじさんが言っていた“○○さんのお嬢さん”と、彼女らの知っている“○○さん”は同一人物なのか?
声をかけてきた女性が、念を押すように「違うんですよね? 違うんですよね?」と訊くので、「違います」と答えると、またもや息の合った「エーーーっ」と驚嘆のリアクション。

「ホント、そっくり」
「すっごい似てる」
彼女らのひそひそ声を浴びながら、それほど自分に似てる人がいるなら会ってみたいものだと思った。
しかし、いくら他人が似てると思っても、自分で自分に似ている人を見て「似てる」と思うものなのだろうか? 案外、そっくりと言われる当人同士は、「そうかなあ?」くらいにしか認識できないのではないだろうか。
そんなことを考えているうちに、わたしにそっくりな人を知っている彼女らは、「すいませんでした」と謝りながら電車を降りていった。

“世の中には自分と似た人が3人いる”と言うけれど、もし今度、もう一人の自分かもしれないそっくりさんに間違えられることがあったら、別の自分の素性について訊いてみようと思った。が、二度あったことの三度目はないまま、わたしは東西線沿線を離れてしまった。こんなことなら、二度目の彼女らに、そっくりな自分のことを尋ねてみるべきだったとたまに思う。

ところが昨夜、編集者のクマさんに、G大学同窓パーティの写真を見せてもらっているときである。
「あれ、わたしがいる」ではないか。

髪の長さは少々違うが、自分で“自分”と思うほど、自分を見るように似ている。
パーティ会場の食べ物を前にして、嬉しさを隠せない表情。お気楽そうな雰囲気までもが似ている。
写真を見せていたクマさんも、「なんで(同窓会の写真に)写っているのかと思った」と言ったほどだ。
(ちなみに、クマさんはわたしよりずっと年上で、写真の方は若く見える方であることを断っておく。)

あまりにも自分に似た人物を見たので、東西線のエピソードを思い出したのだが、写真の人は東西線の○○さんなのだろうか?
それとも、東西線の○○さんが一人目で、二人目のそっくりさんなのだろうか。

いずれにしても、実際には会ってはいないそっくりさん。
前回は“いるらしい”ことをほのめかされ、今回は写真で発見。もしかしたら、次は自分の目でそっくりさんを見るかもしれない。
そのとき見るのは、ドッペルゲンガーか?


io日和> <魚の庭

1年前の今日の日記 <お笑いはいらない
3年前の今日の日記 <節の日過ぎて曼珠沙華


  
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