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歓迎のサイン

― 「死にかけると早いのよ」から続く ―

「おまけしとくわね」
いくらおまけしてもらったのかよく分からなかったが、きっとよくしてくれたのだろう。
一つ900円の花束を二つ抱え、機嫌のよいおばあちゃんにお礼を言って花屋を出た。

今の時代、ネットのおかげで、どこでもあらかじめ地図で確認できるのはありがたい。
知らない場所でも目的地への嗅覚は利くほうだけど、暑い中、無駄に道に迷ったりはしたくない。プリントしてきた地図を頼りに、埼玉あたりの住宅街と大差ない町並みをきょろきょろしながらお寺さんに向かった。
デジカメもありがたいやね。
20数年前に戻って、記憶の欠片にあるものをあちこち撮ることができたらなあ、なんて思う。

はじめて独りで来たときは、お寺までは辿り着いたもののお墓の位置がうろ覚えもいいとこで、墓石の群れを見渡して途方に暮れた。それで、「おじいちゃーん、おばあちゃーん」と心の内で叫んでみた。
不思議なもので、そしたら一つだけ、呼んでるみたいに目に付く墓石が見えたのだ。駆け寄ってみたら、どんぴしゃり。それがじいちゃんとばあちゃんのお墓だった。あのときも、お盆前の炎天下で、汗だくだったのを憶えている。

いた、いた。
20100805f

久しぶり過ぎて少し不安だったけど、行けばきっと呼んでくれると思っていた。
20100805g

墓石に掛ける水はどんどん乾いていく。
髪をつたって汗が背中や肩にポタポタ落ちる。
墓前のお花を取り替え、用意していった線香の束にライターで火を点け始めたときだった。

パシッ!

お墓の左っ側の空中で、あり得ない音がした。
形にならない透明なものがパッと視界に浮かび、妙な破裂音とともに、昼間の打ち上げ花火に似た白っぽい痕を残して消えたのだ。

あまりに暑いと、変なことが起きても驚きのセンサーが鈍るらしい。
動じることもなく、2~3秒してから、線香に火を点けるのに集中しているお供に訊いた。
そう、今回のにわか参りには、長々と電車に乗りたかったのか、田舎の温泉に惹かれたのか、粋狂なお供がいたのである。

「今さあ、パシッって音がしたでしょ?」
「いんや」

線香が湿気っているのか、親切なお供は火点けに手間取っているようだ。

「パシって、けっこうおっきい音がしたの、聞こえなかった?」
「いんや」

どうやら、パシッ!は私だけが捉えた音だったらしい。
もちろん、視界に浮かんで消えたものも、私しか見ていない。
以前より奮発したお供えのお花にびっくりしてくれたのだろうか。暑かったので、あまり考えず、歓迎のサインにちっちゃな打ち上げ花火を見せてくれたことにしておく。
世の中、考えたってわからないことがたくさんあるのだ。

20100805h

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