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祭りの記憶

東京は下町、入谷の生まれ。
といっても、幼稚園にあがる前の年には埼玉に越してしまったので、入谷にいたのは四歳半くらいまで。だけど、ほんの数年の、それも幼い頃の記憶の欠片は、すごく鮮やかに体に残っている感じがある。その後の何十年もの中でのエピソードが色あせちまうくらい。
とくにお祭りの記憶は、浴衣姿で山車を引いたり乗せてもらったり、そんな思い出は下町を離れてからはなかったから、余計に忘れずにいるのかもしれないが。

先週からときおり耳をかすめるお囃子の音色。
靖国通り沿いに設置される山車と神輿置き場で、町内会の人たちが祭りの準備。その様子が何となく羨ましい、山王祭(さんのうまつり)の季節がやってきた。

金曜の夕方は、事務所の前を山車と神輿が通過。
20100611a

いいな、いいな、と祭りの姿衆を見送った。
20100611b

山王祭は、神田・深川の祭りと並ぶ江戸三大祭りの一つ。
江戸の祭りと聞くと、三社祭りのような血の気が湧き上がるイメージを思い浮かべるかもしれないが、江戸幕府の保護を受けた日枝神社の祭礼とあってか、山王祭はごったがえしの雰囲気がなく静々とした雰囲気がある。それでも昨夜の赤坂日枝神社への宮入りは、なかなか熱かった。

事務所がある町内会の神輿が神社に到着するのは、夕刻7時頃。と聞き、いそいそ向かった日枝神社。
到着、6:59。
20100612a

ホントに祭りの最中?
知らない人ならそう思うくらい、辺りはいつもの土曜のように静か。

で、ちょうど神輿も到着して、山王男坂の五十二の石段を登り始めた。
20100612b

石段の上は人でいっぱい。神門をくぐり社殿へと進む神輿を、各町の氏子衆が迎える。
20100612c
20100612d
20100612e

土曜のゆるりとした都心のビルの谷間で、ここだけが、夕闇が降りる寸前の空に熱を放つ。
いいな、いいな。
20100612f

祭りの空気を味わって、「いいな、いいな」はよそ者の気持ち。
すっかり陽が暮れた帰り道は、祭りの熱気に触れた嬉しさと、微妙な寂しさが入り混じる。
20100612g

一夜明け、爽やかな風日和の日曜日。
靖国さんに散歩に出かけた午後の帰り道、またしてもお囃子の音とともに町内を練り歩く山車と神輿に遭遇。と、ご近所の居酒屋の大将の顔が見えた。
「おいで、おいで」
「え、いや、いいです、いいです」
口では遠慮したフリをしながら、歩道のガードレールをまたいでいる自分。

大将が羽織っていた法被を貸してくれて、山車を引く綱の列に入れてもらった。
山車と神輿置き場に向かうほんの数十メートルだけど、何かもうニッコニコ。子どもの頃の祭りの記憶と繋がって、顔が子どもがえりを起こしてたかも。
ついでに神輿も担がせてもらい、昨夜漂ったよそ者気分の寂しさが温さに変わる。お菓子までもらって帰ってくる始末。
20100613a
シャボン玉も入ってる。

子どもがえりをさらに刺激され、人のいない路地で吹くシャボン玉。虹色の玉が、ビルの合間に消えていく。

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