FC2ブログ

『フランダースの犬』を考える

夜中に小腹が空いたので、コンビニデザートで休憩中の話題。
「『フランダースの犬』の実写版には、エンディングが二つあるんだって」
「……、へえ」

このネタに、一瞬、食いつこうか流そうか躊躇った。が、二つのエンディングという部分に若干の興味が湧く。

『フランダースの犬』といえば日本人が好む、いわば国民的名作。ところが、
わたしにとっては、特別な感銘を受けずに通り過ぎた作品なのである。
決して、つまらないお話と思っているのではない。けれど、特別に感動物としてあげるほど、お気に入りではないという意味。

このお話に「感動した!涙した!」と盛りあがる人は、大抵、テレビアニメの『フランダースの犬』を話題に持ち出す。
でも、わたしはテレビシリーズ「世界名作劇場」を観ていない。その頃、ウチは貧しくてテレビが買えなかったのだ。
というのはウソで、我が家は裏番組を観ていて、わたし自身、何としても『フランダースの犬』が観たいと主張するほど観たいとは思わなかった。
だから、涙と感動の平均視聴率25%の人気アニメが話題に出るたびに、「ふ~ん」と頷きつつ口を噤み、その場の盛り上がりが治まるのを待つ。

おそらく“禁句”なことを言ってしまうけど、そもそも、あのアニメの画風が好ましくない。
何か、貧乏くさい。
貧しい子の話だから仕方ないのだが、それだけじゃなくて、ネロもパトラッシュも、ガールフレンドのアロアも、「善意しか知りません」みたいな顔をしている。ようにわたしには見える。
根の優しさだけを前面に出した表情が、子供ごころに奇妙に感じて仕方がなかった。
正直なところ、わたしは貧しさと善良さがセットで売りのネロ少年に心ときめかなかったのだ。

この奇妙な偏見をいまだに引きずり、ポイントを貯めると絵皿がもらえるコンビニのキャンペーンのときも、『フランダースの犬』シリーズだけは避けたくらいである。
2枚だけ仕方なくもらう羽目になってしまったが、よほど皿が足りなくならない限り、自分では使わない。

しかし、実写版映画の二つのエンディングは、映画好きのわたしの気を惹いた。
・一つは、お馴染みのネロ少年が死んでしまうバージョン。
・もう一つは、主人公ネロが死なないハッピーエンド版。
なのだそうだ。
この二つの結末は、各国の配給会社が好きなほうを選択できるシステムで、日本公開版は、お馴染みのネロが死んじゃう結末のほうである。

二つのエンディングネタを提供してくれたライター氏は、少年の頃、ネロが死んでしまう結末に、
「なんて可哀そうなお話なんだ!何のために、こんな悲しいお話を本にするんだ!」
と読んでいた本を放り投げたという。

「可哀そうかなあ……」
いつもなら口を噤んでいるところだが、思わず言ってしまった。
そう、わたしは、ネロ少年が死んでしまう結末を、あまり可哀そうと思っていないのだ。これが、『フランダースの犬』ファンの輪に入れずにきた理由なのである。

小学校3年か4年の頃、『フランダースの犬』を読んで印象に残った場面を描きなさいという課題が出た。
おそらく、わたしはその課題のために、少年少女向けの翻訳版を読んだに違いない。
そして、描いたのは、大聖堂のホールに架かる絵をネロとパトラッシュが見上げるシーンだった。
でも、わたしは、ネロが可哀そうだから描いたんじゃない。
美しい光景が浮かんだから描いたのだ。

「ひと目でも素晴らしい絵を見たい」
少年の願いが叶うシーンは、静かで美しい人生のクライマックスだと、わたしは思う。
願いが叶った最期なら、命が尽きても少年は幸せだったのではないか、と思うのだ。

実写版映画のハッピーエンド版は、絵のコンクールで評価されなかったネロが、自分はこの世に生きる価値のない人間だと思って失いかけた生命力の灯を取り戻す、というお話らしい。
こっちのエンディングだったら、子どものわたしは、もっと感銘を受けたかもしれない。

ioWEB
関連記事

トラックバック


プロフィール

 葉月いお

Author: 葉月いお
オフィシャル基地<io日和
―魚の庭― Photo綴り
極楽とんぼの「映画会」
メッセージ・お問い合わせ等は
↓メールフォームから
お願いします。

全記事◆タイトルリスト

最新記事

メールフォーム

メッセージ・お問い合わせ等は、こちらからどうぞ!

名前:
メール:
件名:
本文:

こちらのアドレスが受信拒否設定になっていると返信できません。
【メッセージをくださる方へ】
をお読みください。

カレンダー

10 | 2019/11 | 12
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

月別アーカイブ

検索フォーム