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「泣いた赤おに」考

知り合いのトコさんの息子さん、リョウくんは小学一年生。
たまに聞かせてもらうトコさんの話や写真を見ると、子どもらしい素直な少年なのが分かる。

そのリョウくんが、昨日、夕方5時を過ぎても学校から帰ってこないので、トコさんは近所を探し回った。だが、リョウくんは見当たらない。学校にも連絡して、本格的に捜索の勢いに入りかけたところへ、大泣きしながら帰ってくるリョウくんの姿があった。

四月に入学した頃、おかあさんのトコさんは、リョウくんが学校で他の子たちについていけるかと、ときどき心配する声を洩らしていた。
リョウくんはクラスで一番体が小さい。計算のない素直さは、子どもらしくてユニークだと思うのだけれど、担任の先生には他の子どもたちより幼く映るらしい。
これがどうやら、いじめっこの目にもつくようで、リョウくんは一学年上のある男の子の標的になっていた。

「オレんちに一緒に来なかったらブン殴る」
小学二年生のいじめっこに脅され、学校からの帰り道、リョウくんは嫌々、その子に従った。
男の子の家は母子家庭。おかあさんは、子どもが起きる前には出勤し、帰ってくるのは夜の7時過ぎなのだそうだ。
大人のいないオレんちで何が起こったか。

鍵っ子の男の子は、一つ下のリョウくんと仲良く遊んでくれたのではなかった。実際にどんな時間を過ごしたのかは二人にしか分からないことだが、リョウくんによれば、何か言うとその子に叩かれていたらしい。帰宅したリョウくんに、幸い大きな怪我はなかったそうだが、オレんちで恐怖の1時間半を過ごして、リョウくんは1時間ほど泣き通しだったと言う。

夜になって、その男の子とおかあさんが、トコさんの家を訪ねた。
男の子は学童保育所でも問題を起こし、つい最近、保育所を締め出されてしまったそうだ。そうして独りで家で過ごすようになった矢先の出来事だったのだ。
トコさんには、いじめっ子のさみしさが見えた。

「来なかったらブン殴る」
とリョウくんをオレんちへ連れ帰り、
「おかあさんに言ったらぶっ殺す」
そう言ってリョウくんを解放した男の子は、「ごめんなさい」がなかなか言えず、トコさんちで泣いた。
おかあさんも、泣いていたそうだ。
せつなさを残し、泣いた母と子がオレんちへ帰っていった夜、「もう誰にも怒られないで、鍵っ子くんが安らかに寝ていてくれればいい」とトコさんは思った。

日本人ならたいていの人は知っている『泣いた赤おに』の話を思い出す。
人間たちと仲良くしたい赤鬼は、「ココロノ ヤサシイ オニ デス」なんて立て札を作り、オニんちへ村人を招こうとする。ところが、そんな立て札の文句が、かえって村人たちを気味悪がらせてしまう。人間の世界をよく知らない若い鬼は、自分の気持ちが伝わらないことに腹を立てて癇癪を起こす。そこへ青鬼さんがやってきて、一案を講じてくれるのだ。

鍵っ子の孤独な男の子にも、青鬼さんが来てくれたらよいのかもしれない。
『泣いた赤おに』の話が心を打つなら、青鬼さんの代わりになる人が現れてもいいのではないだろうか。
学童保育所で彼がどんな問題を起こしたかは知らないが、小学二年生の子どもを締め出すしかなかったのだろうか。

幼い赤鬼のために、青鬼になれるオトナはいるはず。青鬼でなくても、接してくれる村人でもよいのだ。
内に涙を溜めて癇癪を疼かせたまま赤鬼たちが大きくなってしまわないように。
そして、癇癪を疼かせたままオトナになった赤鬼たちは、さみしさの裏を返して他人に当たらず、素直な自分を見つける努力をしてほしい。
『泣いた赤おに』でも読み直して、泣いてみたらいい。

ただ、秀逸なお話は涙するためだけにあるのではない。子どもに読み聞かせて終わる話ではないのだ。
赤鬼は気がつけばどこにでもいて、青鬼が現れるのを期待しているのかもしれない。
青鬼でなくとも、気のいい村人でも助けになるのではないだろうか。

偕成社の大型版。
梶山俊夫さんが描くおおらかで線の強い絵もユニークで素敵なのです。

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