
川幅を広げ、濁流を勢いづけていた数日の雨。
その雨が予報どおり上がった西の空に、降りていく夕陽が明け方みたいに空と町を明るく照らしていた。
今年も夏の扉はいつの間にか静かに開いていた。
夏って、パッカーン!と開くイメージがあったけれど、それが数年前から「夏は静かに開いている」、そんなふうに感じるようになった。
雨上りの風に吹かれる夕方のベランダで、昨日は雲の合間に虹の切れ端を見ていた。南東の空に。
すぐに消えてしまいそうでいて居残る七色の太い輝きを眺めながら思った。
春の扉、秋の扉、冬の扉、どれも違うなと。
実際、聞かないし、言わないし。
夏だけが、「扉」って言い方が似合ってる。
「夏」、「扉」とくると、ハインラインの小説『夏への扉』(The Door into Summer)というタイトルを思い出す。
「夏への扉」、この文字の響きがすごくいい。
でも、わたしが感じているのは「夏の扉」。
気がつくと、すでに開いている姿で現れる扉なのだ。
今朝は4時半に目が覚めて、そのまま起床。
暦のうえの夏(夏至)とは別の、体で感じる夏の到来。
遠くで蝉の声が一瞬、聞こえた涼やかな朝。
<io日和> <魚の庭>