
“町”の人たちは、この“町”を「何もない所」とよく言う。
それを聞くたびに、こっちは大きく「えーーーーっ?!」とリアクションしてしまう。
「何もないどころか、すごい所です」
今度は“町”の人のほうが「え?!」という顔をする。
その「え?!」が、まるでまさかの「え?!」ではない。
微妙に照れた嬉しさが混じってる。
都心から、この“町”に来て一年半を過ぎた。
川はきれいだし、小山はあるし、一年中、花が見られて鳥もたくさんいる。
最近では、キジを探して歩いている。
こんな生活が、自分の未来にやって来るなんて、想像もしていなかったし、望んでもいなかった。
なのに、なぜ?
と、ときどき思う。
住む場所を変えるというのは、その土地の神さまに迎え入れられるということ。
たった一つ見つけた面白い物件を試しに見せてもらいに来たとき、ドアを開けた瞬間に陽射しいっぱいの環境に心を捕まれてしまった。
でも、一見「何もない所」に、生活が不便なのではないか、退屈するのではないか、身動きがとれなくなるのではないか、と頭で考える不安と恐れに襲われてジタバタしたものだ。
神さまは、面白おかしく見ていたかもしれない。
この“町”は、一見「何もない所」。
「何もない所」の豊かさに魅入られて、日々喜んでいる姿を、神さまはまた面白おかしく見ているのかもしれない。
★ <魚の庭> 「部屋に満月」

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