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運に負けない~銭湯にて~

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<20110915>
嫌な予感というのは当たるもので、予感があるなら避ければよいのに、イヤ~な感じが根拠なくするだけで、どんな嫌なことが起こるのか分からないから困る。
何となくだが、嫌な感じを持ったまま銭湯へ。

昭和の雰囲気そのままの、神楽坂にある行きつけの銭湯。
脱衣所に入り、パッと見たところ、洗い場は混んでも空いてもいない微妙な状況だった。

銭湯で大事なのは、自分のカラン(蛇口)、身体を洗う場所をどこにするかだ。
私の場合、ご近所の地元客ではない引け目があるので、なるべく入り口に近い下座を選ぶことにしている。それが今夜は、どの列の下座も空いていなかった。

次に、洗い場所を決めるのに大事なのは、できればカランが一つ置きに埋まるように自分の場所を確保することである。
気をつけていても、隣の方にシャワーの飛沫や、桶の流し湯がかからないとは限らない。
銭湯の平和を守るためにも、お互いに悠々とバスタイムを過ごすためにも、カランは一つ置きが理想的。
なのに今夜は、どの列も一つ置きに場所が埋まっていた。
すると、中央の列に二個空きの場所を発見。
難度高い選択になるが、空いているどちらかを選ぶことにした。

一番湯船に近い上座は、60代か70代と思しき小柄なご婦人。
銭湯に通い慣れてる人らしく椅子など使わない立て膝座りである。
その方の隣のカランが二つ空いていて、次は場所取りを示す桶とプラ椅子が置いてある。
常連ふうのご婦人寄りか、場所取りを示す桶とプラ椅子寄りか……。
一瞬迷ったが、とっさに常連ふうのご婦人の隣に場所をとってしまった。
途端に、そのご婦人が、隣に来た私と距離を取ろうと、桶ごと座る位置を湯船寄りに引いた。
過敏だ。
まだ飛沫の一滴も飛んでないってのに。
お湯、出してないしー。

場所取りだけの桶と座椅子寄りのカランに移ろうかとも思ったが、移動した途端に持ち場の主が戻ってきて、今度は逆サイドでピリピリされるかもしれない。と、敏感なことを考えて、やたらに動けなくなってしまった。

ここで頑張ろう!

カランから桶に湯を出すと、また、隣のご婦人が湯船寄りに若干身を引くのが分かる。
気を遣ってしょんぼりしながら、桶に汲んだ湯を何度か静かに体にかけ、固定式のシャワーに手をかけた。
風呂では髪から洗う習慣。
恐るおそるシャワーのレバーをゆっくり引いた。
あまり勢いよく湯が出ないよう慎重に。
と、婆さんがご婦人が、それまで以上に大きく反応した。
湯船寄りに退くどころか、タイル張りのカラン列からはみ出す位置に桶ごと移動したのだ。

もー、超過敏じゃない? それって。
ピリピリしているのが伝わり過ぎて、こっちはしょんぼりからうんざり。
嫌な予感が的中し過ぎて、自分の運を呪いたくなる。

ここで運に負けてはダメ!
状況をよく見ろ!


すると、同じ列の一番下座のご婦人が上がり支度をしているではないか。
暫し、そのご婦人の様子をうかがいながらシャンプー待ち。
油断はならない。
下座が空いた途端に、思いもよらぬ他の下座待ちに場所を取られる可能性もある。
運の悪さに弱気になっていると、そういうことが起こりやすいのだ。

絶対に下座へ移る!

心を決めたところで、予測どおり下座が空いた。
そそくさと移動する。

ふぅ、こうして小さな悪運を免れた。

私の銭湯歴は早6年。
最近では、ウチ風呂では満足できなくなっていて、おっきいお風呂なしの人生なんて“武術を見せないジェット・リー”くらいつまらない。
このまま10年、20年と銭湯通いが続き、果ては銭湯のプロと呼ばれる婆さんになっても、過敏症のぴりぴりババアにはならないようにしたいものだ。
と、心に思う銭湯帰りであった。

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