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サンタの仕業

「クリスマスは何が欲しい?」

そんなことを訊かれても、欲しい物なんて浮かばない。
子どもの頃からそうだった。

「いおろは何が欲しい?」
「うーん……」

考えてはみるものの欲しい物が出てこない。
そりゃあ、オモチャ屋さんやデパートに行けば、そそられる物はいくらでもあったけれど、あらためて「欲しい物」を尋ねられて口に出ないということは、それらはあってもなくてもどーでもいい物だったに違いない。

クリスマスの朝、「欲しい物」が分からない娘の枕元には、それなりに喜ぶプレゼントが二つ置いてあった。
父親から一つ、母親から一つ。
幼稚園にあがる前から、二つのプレゼントはサンタクロースが持ってきたものじゃないことは分かっていた。

ウチの親達は、それらが「自分たちからのプレゼント」とは言わなかったし、「サンタさんから」とも言わなかった。
一度、「どっちがお父さんので、どっちがお母さんの?」と尋ねたことがある。
母親の返事は、ぼやけ過ぎてて言葉の欠片も思い出せないほどうやむやだった。

今にして思えば野暮な質問だったと思う。「誰から贈られたか」なんて、ちっぽけで下世話なこと。
サンタが直接持ってきた物でないにしろ、それは「クリスマスがくれるプレゼント」だったのだから。

小学校にあがる前の年も、母親はお約束のように訊いてきた。
「いおろはクリスマスに何が欲しいの?」
「妹!」
この年は、間髪いれずにはっきりとリクエストした。考える間もなく口から出たというのが正しい。
答えを用意しておくほど、わたしは頭のいい子じゃない。ただ、その頃、なかなか届かない荷物を「まだ?」とせがむように、“妹、妹”と思っていたのだ。

クリスマスの朝、目が覚めると、枕元にはピンクに頬を染めた薔薇の花のような赤ん坊が置かれていた。
ということはなく、例年通り二つのプレゼントが置いてあった。包みを開けると、中から赤ん坊が!ということもなかった。

でも翌年のクリスマス、妹は届けられていた。母親のお腹に。
「男の子か女の子か、まだ分からないよ」
お腹にいるのは“妹”と決めつける娘に、両親は何度となく言ったが、“妹”としか考えられなかった。
考えるまでもなく“妹”に決まっていたのだ。その証拠に、妹がいるもの。

その年からだったように思う。枕元にプレゼントという儀式がなくなったのは。
プレゼントは何かしら手渡されたけれど、ミラクルな感激の記憶がない。
それらに比べて、“妹”はミラクルだった。母のお腹の中とはいえ、イブのケーキやチキンと一緒にその場にいたことは、サンタの存在を知らせているのだと思った。

これが、わたしが初めて知った「サンタの仕業」。「クリスマスがくれるプレゼント」だったのだ。

じゃあ、それまでのプレゼントは何だったのか?
それらも「クリスマスがくれるプレゼント」に他ならない。
望みや願いはおろか何が欲しいのか分からず、薄ぼんやりとした頭の子どもには、サンタもプレゼントを適当に見繕うしかなかったのだろう。

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